Gibson L-5C のウェッジ加工による指板アングル修正
1977年製のGibson L-5 C です。特に大きな傷もなく、ほどよくヤケていて雰囲気があるのですが、弦高が高めになっていて(1弦2.5mmぐらい)、ソロを取るにはかなりキツイので改善することになりました
弦高が高めなのでブリッジ・サドルをギリギリまで削って調整していたようです。これ以上サドルを削るのは忍びないのでほかの方法を考えてみることにしました
さらに弦が1弦側に寄っていて、弦落ちの可能性もありこれらも改善することにしました
ネックのリセットも考えられましたが、ジョイント部付近は一度修理した形跡があり、いちおう直っているのでそこはいじらず、指板とネックの間にウェッジ(クサビ)を貼り指板アングルを修正することにしました。まずは指板をはがします。はがす際に使うパレットナイフで塗膜が欠けないようにあらかじめネックとバインディングの間にペンナイフで切れ目を入れておきます
ラバーヒーターで指板をはがしていきます
ほとんどダメージがなく上手くはがすことが出来ました。ネックとネック・エクステンションは一体型仕様となってますね。
指板エンドのバインディングがはがれていますので、まずここを接着しておきます
バインディングの反発力が強めなので専用のジグを作って接着します。アラルダイト(エポキシ接着剤)をはがれ箇所に充填し、突っ張り棒で押し付けます。このまま2~3日養生します
ウェッジは3mm厚のメイプル材を使用します。レベルを出したら、よくスクラッチして密着がよくなるようにしておきます
メイプル薄板をタイトボンドでクランプ接着します
メイプル薄板が接着されました。これからナット側を重点的に削っていき、角度を付けていきます。指板、フレット、ブリッジなど各部の収まりを何度も何度もシミュレーションした結果、ナット部は0mm厚、12フレットは1.9mm厚としてウェッジ加工することにしました
バイオリン用カンナで慎重に削りながら予定した角度を付けていきます
ある程度角度が付いたら、後はサンドペーパーを貼ったスリ台で削ってウェッジを仕上げます
指板を貼る前に指板底面のレベル出しをします。フレットが付いたままですとクセが付いていて平らになりにくいのでフレットを抜いてから、アイロンで矯正します
指板底面を平らにする為アイロン矯正します。これでだいぶ平らになります
なんとか指板貼りまできました。タイトボンドで接着します
指板が接着されました
ギターをホールド台にセットし、指板を最小限削ってレベル出しします
フレットを打ったら接着剤を入れる前に、一度弦を張ってみて様子をみます。ロッドの効き具合、弦高、ブリッジの高さなどをチェックします
フレット周りが完了したら、弦の振り分けを調整します。この場合はテイルピースを少し移動させて修正しました。ホールド台にセットして目視で確認しながらセンター合わせをします
サドル底面にエボニー板を貼って高さを改善します
エボニー薄板をアロンジェルで接着します
スピンドルサンダーではみ出た部分を削って整形します
ブリッジのフィッティング・ジグを使って底面のフィッティングをします
はみ出たウェッジをヤスリなどで削り、ツラ出しします
周りの雰囲気に合わせてバインディングの着色をします。その後、ネック裏をオーバー塗装します
バインディングの着色も自然な感じになりました。ウェッジの部分もそれほど目立たないと思います
ブリッジもほどよい高さを確保出来ました。現在、サドルを目一杯下げての弦高は1弦1.0mm、6弦1.2mmとなりました。あとはお好みで自由に高くすることが出来ます
1弦と6弦の指板脇までの振り分けもOKです!
美しいアンバーカラーのトップがよみがえりました!
ネック周り、ブリッジ、テイルピースまでのオーバーホールが完了してかなり弾き易くなりました。音も以前よりしっかり出るようになり、よく鳴っています。ということで、せっかくですのでお渡し前に軽く何かやりましょ! アイルシーユー~♪でも。 (笑)